遺言【受遺者の放棄】|新潟・上越相続
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2020/07/19
遺言
受遺者の放棄
前回は『遺言書の書き方』(4)として、遺言の効力について書いてみました。今回は、遺言の書き方からは少し外れますが、もらう方の人(受遺者といいます)は、もらうことを放棄できるのか?をお伝えしたいと思います。
結論から言うと、もらう方の人(受遺者)がもらいたくないと思えば、遺言者の死亡後いつでも遺贈を放棄できるのです。ただし、財産の全部または一部を一定割合でもらう(包括遺贈)場合は、相続放棄に関する規定が適用され、自己のために相続開始があったことを知ったときから3か月以内に家庭裁判所へ放棄の申述をしなければなりません。
ここで特定の財産を承継することを記した遺言でも、その文章が、相続させる。という文章で書かれている場合、いつでも放棄できるわけではないのです。通常の『遺贈する』旨の遺言の場合にはいつでも放棄できるのに対して、『相続させる』の遺言の場合遺言者の死亡により受遺者に当然に財産などの権利の移転は起こっていると考える考え方が主流でなのです。既に移転が起こっているのにいつでも放棄できるというのは変ですよね。でも放棄できないのかというと、相続させる旨の遺言で、相続放棄の手続ができると考えることはできますので、まったく放棄できなくなってしまうわけではありません。
ここで、遺言を放棄した場合その財産はどうなるのか?
その答えは、相続人で分割を話し合う財産のグループに入るのです。遺言書がない場合、亡くなられたときの財産は、すべて相続人で分割を話し合う財産のグループになります。逆にすべての財産が遺言書でその処分が決まっている場合は、相続人で分割を話し合う財産のグループに入る財産はありません。遺言で誰がもらうか決まっていた財産が、遺贈の放棄をされたとしたら、処分が決まっていない=相続人同士が話し合わなければ誰のものか決まらない財産、となってしまうのです。
ここまで書いてくると、これから遺言書を書こうと思っている方は、なんだ遺言書を書いても意味ないじゃないか?と思うかもしれません。ある意味100%自分の思い通りになることは多くはないかもしれません。しかし、以前も書きましたが、遺言は遺言者の思いを伝える手段です。何もなければ、道しるべもありませんから、残された方々は途方に暮れてしまうかもしれません。何より、残された方々の笑顔を思いながら書いた遺言には、それを実現する力があると思います。
もらわれる方も自分の分が少ないと不満をお持ちになる方が全くいないわけではありません。ですが一方、遺言の趣旨を理解し、特定の相続人に財産を集中するために自分がもらえる遺言記載の財産の取得を辞退されるご家族もいらっしゃいます。ご自身の思いを伝える遺言には、そんな力があるのです。
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